持続的な島産業
石垣島が、社会も経済も環境も、豊かで幸せな島であるように。
石垣島のサンゴ礁が自然に棲める環境を取り戻そう
サンゴ礁を守るには、当たり前すぎるかもしれませんが 「サンゴが自然に住める海を守り、 取り戻す」 ことが大切です。
現代の科学技術ではどんな移植も多くのコストがかかり、生存率を高く維持するには沢山の人間による膨大なケアが必要だから
です。一方で、環境さえ適していれば放っておいてもサンゴは自分でどんどん増えていきます。
それを可能にするには開発を抑えてサンゴが自然に生息する場所を守ることはもちろんのこと、赤土や陸から海への過剰な負荷となる汚染源を減らし、山と海が自然の生態系機能を保てるよう守っていくことがとても大切です。
自然界では、山が育んだ様々な微量元素を含む栄養素が海へ流れこみ、沿岸を中心に海の豊かさを育んで、生物と環境がうまく循環しています。
しかし現代は、自然界に本来存在しない人工の化学肥料や農薬、家畜からの排泄物、工業排水などが自然界に排出され、自然分解しない過剰な量が投入されることで、生態系のバランスが崩れたり破壊され、健全な環境とは言えなくなってしまっているのです。オニヒトデが大発生するようになったのも、水質がより汚染されてきたからと言われています。
特にサンゴ礁は貧栄養の海域に適して進化した生物のため、熱帯海域の特徴である澄み切った海を保つことが大切なのです。
水質が悪化すると、より栄養を好む海藻や藻場に生息場所を奪われやすくなります。カリブ海では既に、サンゴ礁が海藻優先の生態系に遷移が始まり、観光や漁業に打撃を受けています。
しかしサンゴ礁からなる石垣島であっても、標準的な日本の海域の衛生基準をまもる水質基準や法律しかないため、サンゴ礁に適した海域を保つための水質の規制はありません。
沖縄県は、赤土防止基本条例を定めていますが、主な流出元である農地には規制や罰則がないなど、根本的な解決策にはなっていません。
サンゴ礁に影響を与える生活と産業
いったい石垣島ではどの産業がどれくらい海への栄養塩汚染に寄与しているのか?
この問いに対する調査結果が2018年に発表されました。
この結果、畜産、農業、下水がトップ3の汚染源ということがわかり、特に、サトウキビ、肉牛繁殖、単独浄化槽がその多くを占めていたという結果が出ています。
畜産、農業、下水の不適切な管理と規制のゆるさが、石垣島のサンゴ礁保全に重要な水質へ影響を与えています。昔から行われてきた、もともと持続的であった島産業も、時代の流れとともに負荷が増えても規制がないままということが殆どで、問題を大きくしています。規制の基準は定期的な見直しが必要で、そこでは生態系全体を考慮に入れる必要があります(*詳しくは、サンゴと水質の記事もご参考下さい)
2018年の石垣島での調査から、石垣島周辺の水質が窒素量流入においてサトウキビ畑(33.7%)に代表される農業から47・6%、肉用牛繁殖(26.2%)に代表される畜産から31.2%、単独浄化槽(7.8%)に代表される生活・農業排水(観光施設含む)から20.7%がサンゴ礁海域の富栄養化に影響していることがわかりました。
また、これを全りんの推定発生量で見た場合、肉用牛(繁殖)(59.2%)に代表される畜産が72.2%、単独浄化槽(8.4%)などの排水が21.9%、農業が5.8%寄与すると推定されました(Miyamoto et al, 2018)。
この調査は窒素やりんなどの主な負荷物質の流入量の推定のみですが、農業においてはこれらの負荷物質を粒子にくっつけた赤土も流出して、物理的にもさんごに覆い被りダメージを与えます。
また、この栄養塩や赤土の影響によりサンゴ礁が減少すると沿岸の生産力も落ちるので、より資源に配慮した持続的な漁業へ転換し、資源を獲りすぎず守りながら利用していくことも必要です。
もちろん漁業も被害者だけというわけではありません。石垣の海岸にも大量に打ち上げられる海洋漂着ゴミの46%は漁業ゴミと言われ、海での人間活動からのゴミ発生を抑えなければ、汚れたビーチは観光産業へ打撃を与えます。
いま、農業・畜産・工場や生活排水などからの海洋汚染は石垣島の母なる海へ大きな負荷をかけています。従来の方法を根本から変え持続的な産業へと転換することが、サンゴ礁に活かされている私たちに必要とされています。
住民の一人ひとりができるところから農薬や肥料の使用削減、赤土流出の農地対策、家畜の糞尿処理の適正化、食品工場や店舗・家庭排水処理について考えたり、またその仕組みや制度を、今一度見直す時にきているのではないでしょうか?
陸x海 Reef-Land プロジェクト
取り組みを行う島の産業を紹介
資源を持続的に利用するために、山から海へつながる水質を守る大切さに気づき、地道に自主的に環境負荷を抑える取り組みをしている生産者も石垣島にはたくさんいます。
この価値のある取り組みや生産物は、陸で行うサンゴ礁保全そのもので、この方たちは、地球と地域のことを考えサステナブルな島を作っていくロールモデル。
自分の住む大切な環境を守りながら美味しい野菜や魚、お肉を生産することで本人も次世代へ続く仕事をしている誇りを感じ、一緒に働く人や消費者にも希望をもたらすので、まさにwin-winの関係です。
SIIではこのような持続的な地域を作っていく生産者・事業者さんを応援し、もっと多くの人へ取り組みが広がるように順次紹介していきます!
そして同じ想いを共有する地元のマーケット、消費者、サポート企業とつなげることで経済を応援していきます。
私はこんな取り組みをしているよ!と言う方、ぜひご連絡下さい。
サステナブルな
農業や漁業のガイドライン
SIIでは、サステナブルな農業や漁業の実践者が集いガイドラインを編み出す取り組みを進めていきます。
産業セクター別に、現実的になってきたものから順に、こちらへ紹介していく予定です。